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「音の対象化」という方法

 今日、電子音楽の抱える困難は二つある。まず資源の枯渇、そして方法の枯渇である。資源に関して、電子音楽の取りうる方策は2つあった。一つは自然音や既に存在する音を素材とするもの、他方はサイン波などの単純な波形を変形して素材とするもの。どちらも模索の限りが尽くされ、自然や自然音を愛する私がこう言うのはとても悲しいことだが、水や川、動物の鳴き声を濫用した電子音楽、また複雑な計算による合成音を駆使した電子音楽ー共に新鮮味の一切ないものとなっている。次に方法としてのモジュレーションにおける表現力の限界。それはソースの限界と相関しながら、ソースの音の拡張ないし変形を目論見ながらも、表現上の限界を呈している。だから、この2点に関して、今日の電子音楽についてまだ何か可能性があるとすれば、何かを述べなければならない。ソースの変形、という造形方法が転倒されねばならない。

 私は伝統的なスコアを追う方法、ないしはタイムラインに沿ってイベントを置いていく方法ではなく、ソースそれ自体を対象化し、それを空間内で自由にプログラマブルに運動させ、音の物理的運動をシミュレートすることで、まずソースの変形という方法を転倒する。ソースの多様性と変形の多様性は複雑な関係にあるが、その複雑性そのものが電子音楽というものを一様にしてしまっている中で、変形を転倒してソースの独立性を一旦切り離しておく。それは再び恣意性を回復する、つまり音楽に概念や思想を再び導入することを可能にする。

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